2020年6月2日火曜日

思い通り行かないが仕事

実家近くに25年ほど前、親父と建てた平屋がある。

土地へ間取りを平面上に描くのが普通だが、
ひとり居間のテーブルで酒を飲みながら、
いきなり完成し数年経った庭や木々まで入れた
外観図を画家の様に描く親父の姿を憶えている。

チラ見し「家だけでなく樹木も上手っ!」と思ったが、
有名な建築家が建てる前に外観図をスケッチする様な、
「作る職人」でなく「造る職人」みたいな芸術的要素
親父にはあり、仕事を共にしてもそれを感じていた。

当時、私は22~23歳、建物の様式や構造など
まだ知らず怒やす親父の言うがまま朝から晩まで、
どれがどうなるのか解らないで施工をしていた。

二人で製材所から木材を選び運んでは、図面に合わせ
土台や柱、母屋や梁(はり)材へ墨で寸法を書く「墨付」
をし、それを手作業で加工する「切り込み」をする。

今は、図面メールで工程済み「プレカット」状態が
工場から運ばれ、それを現場で組み立てるのが主流。

同じ様に屋根下の化粧垂木(たるき)や破風(はふ)
柱、梁、雨戸や収納する戸袋まで加工し鉋(かんな)
で1本、1枚ずつ綺麗に仕上げる工程を何日もする。

遊びたい盛りの私は、ただただ苦痛な日々の繰り返し。

二人で毎日毎日、怒られ作業し6カ月、そんな私が
完成した家を観て素直に「美しい!」と思い、そして
「建築って凄い!」と感動しました。それまでただ仕事
するから考えや取り組み方が変化したのも事実です。

実家へ戻る際、車の速度を緩めこの家を眺めます。

だいぶ色あせましたが、自分の中で一番好きな家。
そして想い入れがあり、もう二度とは造れない家、

何も知らないあの頃でなく、それなりに知識
経験を積んだ今、手掛けたいと想う家ですが…

「思い通りに行かないが仕事」

職人で親父を越える事も、越えたいとも思いせんが
(実際、もう職人ではありません)ただ、同じ業界
同じ想いで、親父とは違う道を歩んで行くだけです。







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